シェパードトーン|無限に続く音の錯覚

シェパードトーンは、音程が無限に上り(あるいは下がり)続けるように聞こえる聴覚の錯覚です。複数のオクターブの音を同時に鳴らし、音量の包絡線を操作することで、音域を外れずに上昇や下降が永遠に続いているように感じられます。

操作パネル

耳を守りましょう。小さい音量から始めてください。聞こえないからといって音量を上げないでください。表示はdBFS(デジタル基準の相対値)であり、SPLではありません。

使い方

6〜9オクターブにまたがる正弦波を重ね、レイズドコサイン型のスペクトル包絡で各成分の音量を制御して連続グリッサンドを合成します。音の絶対的な高さではなく音名(クロマ)だけが動く錯覚を生成します。

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    再生ボタンを押すと、音程が半音ずつ上がり続けるように聞こえます。実際には高い成分が上限で消え、低い成分が下限から現れるため、音域から外れることなく永遠に続きます。

    ヘッドホンでもスピーカーでも効果は同じですが、静かな環境ほど錯覚がはっきりします。音量は小さめから始め、上昇と下降の両方を試して、錯覚の方向を確かめてみてください。

    連続した純音を長時間聴き続けると耳が疲れます。適度に休憩を取り、異変を感じたら中止してください。

    シェパードトーンの制御パラメータと動作仕様一覧

    当ツールはWeb Audio APIのオシレーター群を用いてリアルタイムに正弦波を合成しています。各パラメータの組み合わせにより、錯覚の明瞭度や速度を自由に調整できます。

    シェパードトーン生成パラメータの仕様と効果
    パラメータ調整範囲初期設定音響的な役割・動作
    進行方向上昇 / 下降上昇周波数が永遠に上がり続けるか下がり続けるかの指定
    変化速度0.04〜0.30 oct/s0.12 oct/s1オクターブを推移する速度。初期値は約8.3秒で1周
    オクターブ重畳数6音・8音・9音8音同時に発振するサイン波の数。30 Hz基準のオクターブ間隔
    マスター音量5〜70%35%出力レベル。クリッピング防止のため音数に応じて正規化
    スペクトル包絡20 Hz〜18 kHz固定レイズドコサイン対数周波数軸上の振幅窓。約600 Hz付近が最大ゲイン

    無限上昇・下降錯覚の音響心理学的メカニズム

    認知科学者ロジャー・シェパード(Roger Shepard)は1964年の論文「Circularity in Judgments of Relative Pitch」において、人間の音高知覚が2つの独立した次元を持つことを明らかにしました。

    第1の次元は1オクターブ内で循環する「音高類(クロマ)」、第2の次元は絶対的な高低を示す「ピッチの高さ(ハイト)」です。

    オクターブ等価性により、オクターブ離れた音は同一クロマを持ちます。両端がゼロになる固定スペクトル包絡線下で各成分を移動させると全体のエネルギー分布が変わらず、ハイトが曖昧化されてクロマの連続的循環だけが知覚されます。

    スペクトル包絡(コサイン窓)の数式と帯域構造

    当ツールは対数周波数軸(log2)上のレイズドコサイン窓でゲインを算出します。周波数 f、下限 f_min = 20 Hz、上限 f_max = 18 kHz に対し、正規化位置 u は以下で定義されます:

    u = (log2(f) - log2(f_min)) / (log2(f_max) - log2(f_min))

    この正規化値 u(0〜1)に対し、振幅ゲインは以下のコサイン関数で決定されます:

    ゲイン = 0.5 × (1 - cos(2 × π × u))

    包絡線は境界(20 Hz・18 kHz)で0となり、幾何平均の約600 Hzで最大値1.0に達します。各成分は f_k = f_base × 2^(k + shift) で同一速度で移動し、上限に達した成分はゲイン0で下限へ循環します。半音の周波数比率は2^(1/12)(約1.0595)であり、この比率を保ったまま全成分が滑らかに推移します。

    映画・ゲーム音響におけるシェパード・リセ・グリッサンド

    フランスの作曲家ジャン=クロード・リセは1960年代後半にベル研究所でシェパード音階を連続変化へ拡張し、無限に滑る「シェパード・リセ・グリッサンド」を開発しました。

    映画音楽家ハンス・ジマーは、クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』や『ダークナイト』で上限なく緊張感を高める演出として応用しました。任天堂の『スーパーマリオ64』の無限階段BGMでも、果てしなく続く階段の心理的表現にこの錯覚音階が使われています。

    オクターブ数による継ぎ目の可聴性と試聴のヒント

    8音や9音では最上部が15 kHz超でゲイン0.01以下となるため継ぎ目は不可聴です。6音では約1.9 kHz(ゲイン約0.74)で循環が起きるため、約8秒周期のクリック音や音色変化を聞き取ることができます。

    内蔵スピーカーは低域が不足し下限成分が薄れることがありますが、錯覚自体は中域の包絡線が担うため成立します。より厚みのある無限音階を体験するには、低域再生に優れたヘッドホンでの試聴が適しています。

    また、高周波数の聴力低下がある場合でも、錯覚の中核を担う成分は数百Hz〜数kHzの中音域に集中しているため、体験に影響しません。

    よくある質問

    シェパードトーンとは?

    1964年に認知科学者ロジャー・シェパードが発表した聴覚の錯覚です。オクターブ違いの音を重ね、音量の包絡線で上下の端を消すことで、音程が無限に続くように聞こえます。

    シェパード音階とシェパード・リセ・グリッサンドの違いは?

    半音ずつ階段状に動くのがシェパード音階、周波数を連続的に滑らせるのがリセのグリッサンドです。どちらも同じ原理による錯覚で、このツールで両方の動きを確かめられます。

    どんな音楽で使われていますか?

    ハンス・ジマーが映画『ダンケルク』や『ダークナイト』で緊張感を煽る効果として使ったほか、『スーパーマリオ64』の無限階段のテーマとしても知られています。

    音量はどのくらいがいいですか?

    スピーカーでもヘッドホンでも小さめから始めてください。純音の連続再生は長時間聴くと疲労につながるため、こまめに休憩を取ってください。

    オクターブ数(6音・8音・9音)の違いは何ですか?

    同時に鳴らすオクターブ成分の数です。標準の8音や9音では、可聴域の両端で成分が出入りする際のゲインが極小になるため、継ぎ目がほぼ不可聴になります。6音を選ぶと可聴帯域内で成分の出入りが起きやすく、約8秒周期のクリック音や継ぎ目の切り替わりを意識しやすくなります。

    人間の耳はなぜ無限に音程が上がっていると錯覚するのですか?

    聴覚心理学において音の高さには「クロマ(1オクターブ内の音名位置)」と「ハイト(高音か低音かの絶対的レジスター)」の2次元が存在します。シェパードトーンは固定された包絡線の中でオクターブ関係の成分が同時に滑るため、ハイトの重心は一定のままクロマの回転運動だけが知覚され、無限に上昇(下降)し続ける錯覚が生じます。