THDテスト|全高調波歪みをオンライン確認

全高調波歪み(THD)をブラウザ上で解析・確認できる無料のTHDテストツールです。FFTを用いて基本波と整数倍の歪み成分を分析し、倍音ごとの内訳を表で表示します。既知の歪みを合成するセルフテストで、計算エンジンの正しさも確認できます。理想的な線形システムに純粋なサイン波(例:440 Hz)を入力した場合、出力には基本波のみが現れTHDは0%となります。しかしアンプやスピーカーに存在する非線形性によって、整数倍(880 Hz、1320 Hz等)のエネルギーが発生します。本ツールはこれらの倍音スペクトルをリアルタイムに計算し、歪みの量だけでなくその質的なキャラクターを評価できます。

操作パネル

耳を守りましょう。小さい音量から始めてください。聞こえないからといって音量を上げないでください。表示はdBFS(デジタル基準の相対値)であり、SPLではありません。

使い方

信号をFFTし、基本波のビンを特定して整数倍のビンのエネルギーを合計。THDを比率・パーセント・dBで表示し、既知の2次・3次高調波を含む合成バッファで自己検証します。本テストでは100 Hz・440 Hz・1000 Hzの基本周波数を選択でき、クリーンな基準波(信号A)と、意図的に2次高調波4%(−28 dB)および3次高調波2%(−34 dB)を注入した歪み波(信号B:計算値4.47% THD)を瞬時に切り替えて比較試聴できます。

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    信号を再生すると、基本波と各倍音の周波数、レベル(dBFS)、基本波に対する比率が表に表示されます。どの倍音が支配的かが分かり、歪みの性質を読み取れます。まず440 Hzを選び、「信号A(クリーン)」を再生して無歪みの純音を耳に記憶させます。

    セルフテストは、既知の2次・3次高調波を含むバッファを合成し、測定と同じFFT処理を通して数学が正しく報告するかを確認するものです。スピーカーの測定ではなく、解析ロジックの検証である点に注意してください。「セルフテスト実行」を押すと、H2に3%・H3に1.5%を注入した0.5秒バッファ(44.1 kHz)が生成され、正確に3.354%(−29.5 dB)が表示されることで計算エンジンが正常稼働していることを確認できます。

    「信号B(歪みトーン)」の試聴:意図的に合成された4.47% THDの音声を再生すると、基本波の背後にわずかな倍音の厚みと硬さが加わることが分かります。表中のH2(880 Hz)とH3(1320 Hz)の数値を確認しながら、耳と目盛りの両面で歪みを把握してください。

    周波数の切り替え(100 Hz / 440 Hz / 1000 Hz):100 Hzは低音ドライバーの歪み挙動の理解に適し、1000 Hzはオーディオ測定の標準的なリファレンス周波数です。440 Hz(A4)は音楽的な音程関係が最も分かりやすく、倍音の調性を把握しやすい利点があります。

    倍音ごとのレベル比率の確認:表中の「比率(%)」と「dBFS」を観察することで、偶数次高調波主体のウォームな特性なのか、奇数次高調波主体のざらついた特性なのかを直感的に読み取れます。

    本ツールの測定値はWeb Audio API内部で生成されたデジタル信号(dBFS)のFFT解析値です。外付けスピーカーやマイクの実機音響測定には対応していません。

    高調波の次数・周波数と聴感上の音色キャラクター対照表

    基準音 A4 = 440 Hz に対する第2次〜第6次高調波の周波数、音楽的な音程関係、および人間の聴覚に与える音色キャラクターの一覧です。

    単一のTHD数値(例:0.5%)が同じであっても、エネルギーがどの次数の高調波に集中しているかによって聴感上の印象は一変します。偶数次は音楽的に協和しやすく、奇数次や高次の高調波は不協和で耳障りな濁りをもたらします。

    440 Hz基準時の高調波次数と周波数・音程・音響的キャラクター一覧
    次数周波数 (A4=440 Hz時)音程関係音色のキャラクターと音響的影響
    H2 (第2次)880 Hz1オクターブ上協和的で豊かな響き。シングルエンド真空管アンプに多く「温かみ」や「太さ」を与える
    H3 (第3次)1320 Hz1オクターブ+完全5度 (+19半音)基本波と不協和。プッシュプル回路の飽和やクロスオーバー歪みで現れ「粗さ・硬さ」を生む
    H4 (第4次)1760 Hz2オクターブ上協和的。基本波のオクターブ成分を支え、低レベルであればH2の豊かさを補強する
    H5 (第5次)2200 Hz2オクターブ+長3度 (平均律比−13.7セント)不協和。強くなると金属的なベル鳴りや耳に刺さる刺激音として聴知される
    H6 (第6次)2640 Hz2オクターブ+完全5度通常はレベルが極めて低いが、ハードクリッピング時に上位倍音群の一部として不快感を増す

    THDの計算数式と注入高調波セルフテストの数理

    全高調波歪みは、基本波のRMS振幅 V1 に対する各高調波の二乗和平方根(RMS合計)の比率として定義されます。基本波を基準とする THD_F(Total Harmonic Distortion referred to Fundamental)の計算式は以下の通りです:

    THD_F = √(V2² + V3² + V4² + ...) / V1

    これに対し、全成分(基本波を含む総合エネルギー)に対する比率を表す THD_R(THD referred to Total)も用いられ、両者は THD_R = THD_F / √(1 + THD_F²) の関係で結ばれます。低歪み領域(1%未満)では両者の数値はほぼ一致します。比率からデシベル(dB)への換算は 20 × log10(ratio) で行われ、10% は −20 dB、1% は −40 dB、0.1% は −60 dB、0.01% は −80 dB に相当します。

    本ツールのセルフテスト機能は、既知の高調波成分を注入した信号バッファを生成して計算エンジンを自己検証します。H2 に 3.0%(0.03 = −30.5 dB)、H3 に 1.5%(0.015 = −36.5 dB)を合成した場合、理論上の期待値は √(0.03² + 0.015²) = √(0.0009 + 0.000225) = √0.001125 ≈ 0.03354(3.354%、−29.5 dB)となります。画面上のセルフテスト結果が正確に 3.354% を示すことで、ブラウザ内のFFTビン探索および二乗和加算処理が数学的に正しく機能していることが証明されます。

    参考として、代表的な基本波形の幾何学的THD値は次の通りです:純粋な矩形波(奇数次倍音 1/n)は √(π²/8 − 1) ≈ 48.3%、鋸歯状波(全倍音 1/n)は約 80.3%、三角波(奇数次倍音 1/n²)は約 12.1% のTHD_Fを持ちます。

    ブラウザ・マイク測定の限界とトラブルシューティング

    本ツールはWeb技術によるデジタル信号処理の学習およびデモを目的としています。実際の音響機器やスピーカーを測定する際は、以下の技術的限界を理解することが不可欠です。

    • 校正済みループバックの欠如:本ツールで表示されるdBFS値はデジタルフルスケール基準の相対値であり、音圧レベル(dB SPL)やハードウェア実機の絶対的な歪み率ではありません。アンプやDACの実測には専用オーディオアナライザーが必要です。
    • ナイキスト周波数による観測倍音数の上限:サンプリングレート 44.1 kHz 環境では 22.05 kHz を超える周波数は存在できません。そのため 440 Hz の基本波では最大でも第50次高調波までしか原理的に観測できず、それ以上の高次は帯域外となります。
    • FFT窓長と周波数分解能の制約:周波数ビンの間隔は 1 / バッファ時間 で決定されます。0.5秒バッファの場合の分解能は約 2 Hz となります。100 Hz のような低い周波数では基本波と倍音の間隔が狭いため、窓関数のサイドローブ漏れに注意が必要です。
    • スピーカーユニット自体の歪みとの混同:一般にエレクトロニクス機器のTHDは 0.01%〜0.001% と極めて低いのに対し、スピーカーの物理的な振動板は 1%〜3% 程度の歪みを日常的に発生させます。耳で聞こえる歪みの多くはスピーカーや部屋の共振に起因します。
    • セルフテストが期待値(3.354%)と一致しない場合:ブラウザのJavaScript実行が極度に高負荷であるか、オーディオコンテキストの初期化に失敗している可能性があります。ページを再読み込みし、他のタブを閉じて再度お試しください。

    よくある質問

    THDとは?

    全高調波歪み(Total Harmonic Distortion)の略で、基本波に対する整数倍の高調波エネルギーの合計を、比率・パーセント・dBで表した指標です。

    セルフテストは何を証明しますか?

    既知の2次・3次高調波を含むバッファを合成し、測定と同じFFT解析にかけて、注入した歪みを正しく報告できるかを検証します。数学の確認であり、スピーカーの測定ではありません。

    ヘッドホンの測定に使えますか?

    校正されたマイクとループバックがないため、ブラウザでの結果は目安です。歪みスペクトルの読み方を学ぶ用途に向いています。

    結果が帯域制限されるのはなぜ?

    サンプルレートの半分より高い高調波は観測できず、FFTの窓幅が周波数分解能を決めるためです。高い次数の高調波はノイズフロアに埋もれます。

    偶数次高調波(2次・4次)と奇数次高調波(3次・5次)の音の違いは?

    偶数次は基本波とオクターブ関係にあり協和的で「温かみ」を感じさせます。奇数次は不協和な音程を含み、過度になると「硬さ・粗さ・ザラつき」として知覚されます。

    THDとTHD+N(全高調波歪み+ノイズ)やSINADの違いは何ですか?

    THDは純粋な高調波ビンのエネルギーのみを合算しますが、THD+Nは基本波をノッチフィルターで除去した残りの全ノイズを含みます。SINADはその逆数(比率)です。