IMDテスト|相互変調歪みを確認

アンプやスピーカーの過負荷時に発生する相互変調歪み(IMD)をブラウザ上で確認できる無料のIMDテストツールです。SMPTEやCCIF/DINなどの国際標準2音信号を再生し、歪み生成物が現れる周波数をリアルタイムに算出・表示します。単一のサイン波による高調波歪み(THD)が音楽的に協和しやすい倍音を生み出すのに対し、複数の周波数が非線形回路を通過する際に発生する相互変調積は、元の音楽とは無関係な不快なうなりや耳障りなノイズとなります。本ツールはオーディオ測定で国際的に標準化されている2音刺激信号を生成し、歪み生成物がどの周波数に出現するかを明瞭に提示します。

操作パネル

耳を守りましょう。小さい音量から始めてください。聞こえないからといって音量を上げないでください。表示はdBFS(デジタル基準の相対値)であり、SPLではありません。

使い方

SMPTE方式(60 Hzと7 kHz、4:1)とCCIF/DIN方式(19 kHzと20 kHz)の2音を同時生成し、2f2−f1と2f1−f2の相互変調成分の周波数を計算して提示します。SMPTE信号では低域60 Hzが大振幅でアンプを揺さぶり、7 kHzの高域プローブを変調する側波帯を検出します。CCIF信号では19 kHzと20 kHzの等振幅トーン(合成ピーク−4.4 dBFS)を用い、人間の耳が最も敏感な帯域である1 kHzの差分音および高域近傍の3次歪み積(18 kHz・21 kHz)を検出します。

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    SMPTE信号は低域で高域プローブを変調する歪みを、CCIF信号はツイーターやDACが最も苦手な高域の非線形性をあぶり出します。どちらも開始ボタンから再生され、停止ボタンは常に表示されます。テスト開始時は必ず音量を控えめに設定してください。

    別タブでスペクトラムアナライザーを開いておくと、プローブ音の周囲にサイドバンドが盛り上がるかを目で確認できます。19〜20 kHzのペアは特に耳への負担が大きいため、音量は控えめにしてください。

    SMPTE信号の再生手順:「SMPTE再生」ボタンを押すと、低音60 Hzと高音7 kHzが4:1の振幅比(低音側が12 dB高い)で同時に出力されます。画面の側波帯リストには、二次・三次相互変調によって発生する 6880 Hz、6940 Hz、7060 Hz、7120 Hz の周波数が表示されます。

    CCIF信号の再生手順:「CCIF再生」ボタンを押すと、19 kHz と 20 kHz の高周波ペアが再生されます。これらは大人の耳には直接聞こえにくい周波数ですが、システムに非線形歪みがあると、明確な「ピー」という 1 kHz の差分音が耳に聞こえてきます。

    スペクトラムアナライザーとの併用確認:別タブでスペクトラムアナライザーを起動し、再生音をループバックまたはマイクで拾うと、理想的な線形システムでは入力した2本のピークのみが立ち、歪みのある環境ではその周囲に側波帯(サイドバンド)が林立する様子を目視できます。

    本ツールの表示周波数は音響工学の理論式に基づく計算値です。ハードウェア実機の測定値を保証するものではありません。大音量での超高周波再生はスピーカーのツイーターを痛める恐れがあるためご注意ください。

    主要な相互変調歪み測定規格(SMPTE・CCIF・DIN)の比較対照表

    オーディオ機器の測定や規格評価で世界的に用いられている代表的な2音法IMD規格の対照表です。

    各規格はテスト信号の周波数ペアと振幅比を変えることで、アンプの電源供給能力の限界、ツイーターの過渡応答、DACの再構成フィルターの非線形性など、異なる弱点を狙い撃ちにして検証します。

    代表的なIMD測定規格のテスト信号構成と期待される歪み生成物一覧
    測定規格名称低域周波数 (f1)高域周波数 (f2)振幅比 (f1 : f2)主な歪み生成物周波数測定の主目的と評価対象
    SMPTE RP 12060 Hz7000 Hz4:1 (低域+12 dB)6880, 6940, 7060, 7120 Hz大振幅の低域駆動による電源電圧変動と、高域プローブの振幅変調歪み
    CCIF (ITU-R 差分音)19000 Hz20000 Hz1:1 (等振幅)1000 Hz, 18000 Hz, 21000 Hz可聴域上限における高周波非線形性と、可聴帯域中央(1 kHz)への差分音混入
    DIN 45403 準拠方式250 Hz8000 Hz4:1 (低域+12 dB)7750 Hz, 8250 Hz 近傍の側波帯中低域と高域の相互変調特性評価(ヨーロッパ規格で広く採用)

    相互変調歪みの発生メカニズムと非線形数理

    オーディオアンプやトランスデューサーの入出力特性が非線形な伝達関数 y = a1·x + a2·x² + a3·x³ + ... で表されるとき、2つの正弦波 f1 と f2 を同時に入力すると、出力には元の周波数だけでなく m·f1 ± n·f2(m, n は整数、次数は m + n)のあらゆる組み合わせ成分が発生します。

    二次項(a2·x²)からは、差の周波数 f2 − f1(差分音)と和の周波数 f2 + f1 が生じます。CCIFテストにおいて 19 kHz と 20 kHz を入力した際、その差である 20 kHz − 19 kHz = 1 kHz が発生するのはこの二次非線形性によるものです。1 kHz は人間の耳の感度が極めて高い帯域であるため、わずか 0.1% 未満の微小な歪みであっても明確に知覚されます。

    三次項(a3·x³)からは、2f1 − f2 および 2f2 − f1 という「原音に極めて近接した側波帯」が発生します。例えば CCIF の場合、2 × 19 kHz − 20 kHz = 18 kHz、および 2 × 20 kHz − 19 kHz = 21 kHz に現れます。これらの三次歪み成分は元の周波数からわずか 1 kHz しか離れていないため、オーディオ帯域内にとどまり続けます。さらに入力レベルが 1 dB 増加するごとに三次相互変調積は 3 dB の急激な傾きで増大するため、アンプのクリッピング限界付近で音質が急速に破綻する主原因となります。

    高調波歪み(THD)が原音の整数倍であり楽器の自然な倍音構造に近いのに対し、IMDの生成物は原音との音楽的な和声関係を完全に欠いています。7 kHz のトーンに 60 Hz 離れた側波帯が重なると激しい「濁り・ザラつき」の唸りを生じ、音響心理学的にもTHDよりはるかに不快で疲労感の強い歪みとして判定されます。

    相互変調歪みの聴感判定とトラブルシューティング

    ブラウザ上でIMDテスト信号を試聴するにあたり、ハードウェア保護および正確な判断のために以下の留意点を確認してください。

    • ツイーター保護のための音量管理:CCIFテスト(19 kHz / 20 kHz)のテスト信号は、人間の耳にはほとんど聞こえなくても、スピーカーのツイーターには実効電力が連続して供給されます。超高周波の大音量再生はボイスコイルの熱破損を招く危険があるため、ボリュームを絞った状態で短時間の試聴にとどめてください。
    • Bluetoothコーデックによる高域遮断:SBCやAACなどの標準Bluetoothコーデックは、20 kHz 付近の信号を圧縮時にローパスフィルターで大幅に減衰させます。ワイヤレスイヤホンでCCIF信号を再生して何も聞こえない場合、それは機器の優秀さではなくコーデックによる信号カットの可能性があります。
    • PC・スマホ内蔵スピーカーの低域限界:SMPTE信号に含まれる 60 Hz の低音は、小型スピーカーやノートPCでは物理的に再生できず、歪み以前に音が聞こえないか、無理な駆動による筐体のビビリ音が発生します。SMPTEテストは口径の大きなウーファーや密閉型ヘッドホンで実施してください。
    • OS側のイコライザー・立体音響エフェクトの解除:Windowsのラウドネス等化やmacOSのサウンドエフェクトが有効になっていると、複数信号の混合時にOS内部のリミッターやDSPが作動し、測定信号そのものを変形させてしまいます。テスト時はすべてのオーディオ効果をオフにしてください。
    • 本ツールの機能的限界の理解:本ページは理論上出現すべき相互変調周波数を提示し、音の濁りを体験するためのリファレンスです。校正されたオーディオアナライザーのように「IMD 0.05%」といった絶対的な歪み率数値を計測するものではありません。

    よくある質問

    相互変調歪みとは?

    2つの音が非線形な回路やスピーカーを通るとき、2f2−f1や2f1−f2などの「元の音にない」成分が発生する現象です。高調波と違い、音楽的に関係のない不快な音になりやすいのが特徴です。

    SMPTEテストとは?

    60 Hzと7 kHzを4:1の振幅比で同時に再生する方式です。低域が高域のプローブを揺らす形で歪みが現れます。

    CCIF/DINテストとは?

    19 kHzと20 kHzのような近接した高域の2音を再生する方式です。1 kHzの差分成分などから高域の非線形性を検出します。

    自分の機器を測定できますか?

    校正されたループバックがないため、このページは信号の提示と歪み成分の周波数表示までです。聴こえる耳障りさはヒントになりますが、数値としての保証はできません。

    なぜIMDはTHD(高調波歪み)よりも不快に聞こえるのですか?

    THDは音楽的なオクターブや5度の倍音を形成しますが、IMDは原音と調波関係を持たない不協和な周波数を生成し、激しい濁りや金属的なざらつき感をもたらすためです。

    3次相互変調積(2f1−f2、2f2−f1)が特に危険視される理由は?

    原音の周波数のすぐ隣に発生するためフィルターで除去できず、入力が1 dB増えるごとに歪みが3 dBのペースで急増し、クリッピング付近で音質を急激に破綻させるためです。